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KYMCO MAGAZINE Vol.4


X-TOWN CT250の佇まいは、日本国内で大ブームを起こしたビッグスクーターを彷彿させる。
2輪オートマチック免許も導入され、250㏄スクーターは日本国内のバイク勢力図を一時的に塗り替えた。その勢いを失った要因はボディの肥大化と過剰な装備、走行性能に見合わない高額な価格設定にあったと個人的には思っている。
昨今の国内市場における125㏄スクーターの成功は、ユーザーの嗜好が実用重視に移行したことを示している。

最初に触れなければいけないのは、この最新キムコ製250スクーターの車両本体価格が56万1千円だということ。
日本国内で販売されている同クラスの価格と比較すれば、この価格がいかに脅威であるかお解り頂けるだろう。しかし、海外モデルのCT300とシャーシを共用している日本仕様のCT250に廉価版の要素など微塵もない。引き締まったデザインは、世界で認知されているスクーターブランドであるキムコのプライドさえ感じる。

特徴は操作系統が至ってシンプルであることだ。あえてキーレスなどの装備は付加していない。キーレスによる遠隔操作は、ドア開閉の無いバイクに必須の装備とはならない。250クラスの最高出力を踏まえれば、走行モードのセレクトもセミオートマチックも過剰な装備だ。アイドリングストップ機能もストップ&ゴーの多い市街地においては時に煩わしい。シート下トランクと給油口の開閉はキーシリンダーでワンアクション。スクーターとして必要不可欠な装備を残し、車両本体価格を抑えることに成功している。

実用重視の日本国内125㏄スクーター市場。しかし高速道路も走行可能な250㏄クラスになると、ユーザーの要望は厳しくなる。このクラスには「モーターサイクル」としての走破性・完成度を求められる、所有感も満たさなければならない。

最高出力14.94 kwの水冷SOHC単気筒は低開度で穏やかに、全開域ではトルクフルに反応するコントロールしやすいエンジン特性。スクーターとしてはやはり「よく回るエンジン」だ。サスペンションやシャーシは硬質な印象で、バイク雑誌風に記せばリアサスペンションは高荷重のセッティングである。一般道の悪路で感じた硬質さは時速100km/h付近での安定感に寄与しているので、ここは納得するしかない。コーナーリングでもCT250はモーターサイクルとしての機動性を十分に発揮する。タンデムしても後ろ下がりにならず操縦性が変わらないのはキムコ製スクーターの美点であるが、このモデルも例外ではない。

エッジの効いたスタイルからは高いシート高を連想するが、780㎜と標準的。私は172㎝であるが両足を着きながらの方向転換は十分に可能である。全長は220㎝でこのクラスとしては標準的だが、コンパクトな印象を受けるのはフラットフロアによるライディングポジションの自由度が要因かもしれない。

カタログ表記では「ブルー」だが、私の感覚ではペパーミントグリーンと呼びたい。80年代に一世を風靡したF1レーサーのスポンサーカラーを彷彿させる。ベテランライダーには懐かしく、若者には新鮮であろう。実用重視な国内のスクーター市場はカラーリングさえも保守的なモノクローム一辺倒にしてしまった。目が覚めるような鮮やかなカラーリングは市街地では人の視線を集める。こんな気恥ずかしさ、優越感は久しぶりの感覚だ。但し、目立ちたくないユーザーの為にしっかりブラックやホワイトの設定もあるので心配は要らない。個人的には思い切ってピンク系もラインアップして頂きたいと思うのだが…。

「モーターサイクルとして性能とスクーターの利便性を融合」言葉にすると簡単なようだが、車検制度のない我が国の250市場は激戦区である。あらゆる機種がせめぎ合い、新たなジャンルすら生み出している。そんな激戦区でX-TOWN CT250はキムコブランドが「250スクーターはこうあるべき」と原点回帰させたモデルと言って差し支えない。改造スクーターに夢中なっていた若者も30代になった。この価格帯なら彼らをリターンさせることもできるはずだ。新たなビッグスクーターの存在価値と可能性を私は感じずにいられない。