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KYMCO MAGAZINE Vol.1

2017年に発売され、クラス史上最速と評価の高いAK550。
今回は市街地の走りやフィーリングについて改めて試乗を行った。

その速さはツインリンクもてぎの試乗において全世界のジャーナリストから高評価を得た。しかし、速さは時に公道において諸刃の剣となる。

市街地においてAK550は使い勝手の良い、日常のパートナーとなり得るのか。

前後輪のバランスが50対50という理想的な重量バランス。低速での安定感は上々、ハンドルの切れ角も十分に確保されているのでUターンに不安はない。

シート高は78.5㎜あるが、幅広のシートの影響もあり身長172㎝の筆者は高いと感じた。
このマシンが低重心と表現されるのはエンジンや駆動部のレイアウトであり、ライダーの着座位置は決して低くはない。
しかし、このシートポジションはスクリーンとの相性が良くベストだ。フットレスに自由度があるのでとても快適。速度やシチュエーションによって足の位置を変えられるのは嬉しい。

東洋人と欧米人両方に高評価される所以は、懐の深いライディングポジションにもある。
エンジンのレスポンスはやはり強力。タンデムや市街地では持て余すので、私はレインモードを多用した。
発進が穏やかでもトルクは失われない設定なので、270度クランク、クロスプレーンシャフトのフィーリングを低速で楽しむことができる。

試乗日はとても暑かったが、エンジン周辺からの熱気を意識することがなかった。これはドライサンプが影響しているのだろう。強制ファンの音もとても静かである。
高速道路やワインディングではスポーツモードが楽しい。ブレーキはブレンボの4ピストンキャリパー+ABS。初期のタッチが穏やかなので市街地でギクシャクしないで済む。
レバー入力に比例して効くタイプなので、自転車や歩行者との不意な遭遇でも、バランスを崩さずにいられる。

アルミ高剛性のシャーシは首都高速やワインディングのコーナリング時に真価を発揮する。直進安定性を基本としてライダーのアクションに忠実に反応するハンドリング。
グイグイとフロントが切れ込んでいくタイプではない。高速コーナーの走破力はスクーターのレベルを完全に超えている。
前後サスペンションは短いピッチでしっかりと衝撃を吸収し、路肩の段差や減速帯を全くストレスとしない。

このようにパフォーマンスばかりを謳ってしまうと尖ったイメージと誤解されてしまいそうだ。フラッグシップたる性能を誇るAK550。

決して突出した部分はない、非常にバランス感覚のある「オトナ」のモーターサイクルである。
それは外観のデザインにも表れている。LEDを使用し、スマホと連動するメーター周辺もかなり華やかではあるが、あくまで実用重視の装備であり、操作はシンプルだ。

試乗中に何度も250スクーターと信号で並ぶ機会があったが、車格もアイドリング音もまるで次元が違う。このシチュエーション、ライダーなら誰でも誇らしい気分になるだろう。
市街地でもAK550はそのパフォーマンスに恥じない存在感を放っていた。

この優越感こそが高級スクーター、つまりAK550の最大の魅力である。一般ライダーや歩行者にはこの大柄なマシンが「バイク天国・台湾」の世界代表選手とは知る由もない。
国産メーカーを選ばず、敢えて世界のスクーター・トップブランドを選択し、トレンドの先を走るのもいいだろう。